2006年07月05日

HYDEアナライザー Vol.1:“THE CAPE OF STORMS”

 はい、つーことで第一弾は、HYDEの1stアルバム『ROENTGEN』より“THE CAPE OF STORMS”の和訳にチャレンジです。

 第一弾にこの曲を選曲した理由は主に次の2つ。

・第一にこの曲は『ROENTGEN』の中でも1・2を争うほどの俺のお気に入り曲だから。
・第二にこの曲は映画『下弦の月〜ラスト・クウォーター』のテーマソングとして採用されており、スタッフロール時にこの曲が流れるとともにその和訳が表示されているから(←まぁ要するに俺がカンニングできるってことです)。

※ちなみに映画『下弦の月〜ラスト・クウォーター』とは、今『NANA』で大ブレイク中の漫画家・矢沢あいの初映画化作品です。この映画で特筆すべきは、他ならぬHYDEが出演しているということ。詳しくは気が向いたら「おすすめレヴュー」にのっけるかも。

 そんじゃま早速いってみましょう〜!



THE CAPE OF STORMS
words & music : HYDE
English Translation : Lynne Hobday



【全訳】

何処へ向かえばいい? 舵を失くした船
この叫びは飲み込まれ 荒れ狂う海に掻き消える
愛は何処へ消えた? いつしか巡り逢えるのだろうか?
嵐の岬はこの胸の痛みをこだまさせる

君は決して気付かない 罪の色に
忍び寄る嵐の空のように それは闇

この闇の中で 僕は追われ続ける
大地の果てすら闇に抱かれてしまうその時まで

幽霊船は遥か彼方を彷徨う
道を照らし出してくれる星がないから
それにもうこの財宝には何の価値もない

何処へ向かえばいい? 舵を失くした船
この叫びは飲み込まれ 荒れ狂う海に掻き消える
愛は何処へ消えた? いつしか巡り逢えるのだろうか?
嵐の岬はこの胸の痛みをこだまさせる

君は知り尽くしている 罪の味を
甘く口の中へ溶け込んでいく まるでチョコレートのように

ひと時の快楽に 君は満たされる
でもどの夢にも 終幕は必ず訪れる

幽霊船は遥か彼方を彷徨う
道を照らし出してくれる星がないから
それにもうこの財宝には何の価値もない

これが僕の運命なのか?

何処へ向かえばいい? 舵を失くした船
この叫びは飲み込まれ 荒れ狂う海に掻き消える
愛は何処へ消えた? いつしか巡り逢えるのだろうか?
嵐の岬はこの胸の痛みをこだまさせる




【解説】

So where do I sail? A ship losing control
訳:「何処へ向かえばいい? 舵を失くした船
● sail は本来「航海する」という意味だが、ここでは場面が海の上であることは明らかなので単純に「向かう」とした。
● control を「舵」としたのは上記『下弦の月』を参考にして。
●『下弦の月』だと「僕は〜」ってのがいっぱいあるんだけど、俺はあんまり好かないので一人称は極力訳出しない方向で。
● So は調子を整えるためにあるだけなので、ムリに訳出せずともよし。

My cries swallowed up, lost in the raging sea
訳:「この叫びは飲み込まれ 荒れ狂う海に掻き消える
● My cries (are) swallowed up, (and are) lost in the raging sea と補って考える。このほかにも受身のbe動詞の省略がよく見られる。分詞構文と捉えてもいいだろう。
● My cries はもちろん「僕の叫び」なんだけど、さっきも言ったようにこの曲では「僕」とか「私」とか「俺」とかの一人称は使いたくないので「この叫び」としておく。

So where has love gone? Will I ever reach it?
訳:「愛は何処へ消えた? いつしか巡り逢えるのだろうか?
● has gone は go の完了形で「行ったきり戻ってきていない」ことを表すので単純に「消えた」とした。
● Will I ever reach it? の it は直前の文の love を指す。reach it の訳は『下弦の月』を参考に「それ(=love)に巡り逢う」で。
● 強調の ever の訳は「はたして」とか「いつ(し)か」あたりで。

The Cape of Storms echoes the pain I feel inside
訳:「嵐の岬はこの胸の痛みをこだまさせる
● 〜the pain (that) I feel inside で目的格の関係代名詞の省略。直訳は「僕が内側で感じる痛み」なんだけど、それって要するに心の痛みとか精神的な痛みのことで、日本語ではときにそういうのを「胸の痛み」とかって表現するはず。
●ここの部分、『下弦の月』では「僕の心は嵐の岬にこだましている」となってるんだけど、pain (痛み)を単に「心」でまとめちゃうんは納得できない。よってここは不採用。

You'll never notice The colour of sin
訳:「君は決して気付かない 罪の色に
●豆知識として sin は「道徳的な罪」を表す。よく耳にする crime ってのは「法的な罪(=犯罪)」の意。

Just as the storm clouds close in It's dark
訳:「忍び寄る嵐の空のように それは闇
●難所。まず全体の文の構成は Just as 〜 close in が副詞節でIt's dark が主節。
●んでもって主節 It's dark の It は the colour of sin を指す。
●最後にas節の中身だけど、the storm clouds がS、close in がVのSV第1文型。この close を特定すんのがこの一文の山場。形容詞の close が後ろから clouds にかかってんじゃないの?とも考えられそうだが、HYDEがクロウ「ズ」と発音していることからそうでないと分かる(形容詞ならクロウ「ス」だから)。よって close は自動詞で、辞書引いてみると「@閉まる A終わる B忍び寄る」でBの若干マニアックな close の意味を見つける。

Here in the shadows I am pursued
訳:「この闇の中で 僕は追われ続ける
● shadows をどう捉えるかが問題なんだけど、複数形になってることを重視して「影」というよりは「陰」≒「闇」とした(shadow は不可算名詞 or 複数形で「陰」の意味がある)。
●あと、ここだと先に出てきた you(=君)と区別するためどうしても一人称の主語(=「僕は」)を入れざるを得ない。

Until the ends of the earth Embraced
訳:「大地の果てすら闇に抱かれてしまうその時まで
●最大の難所。いや、文の構造自体は Until the ends of the earth (are) embraced で単純なんだけども、ここでHYDEがどんな絵を頭ん中に描いているかを推測すんのが難しい。つまりは解釈の仕方が難しいということ。てわけで『下弦の月』を参照してみると「世界の果てまで囚われたまま」ってなってんだけども、はっきり言ってこの訳メチャクチャでまったく参考になりません。この訳はどうやら embrace(抱く)されんのは I (=僕)と捉えてるらしいけど、上述したとおり embrace されんのは 文法的にどう穿って見てみても the ends (of the earth) であって、I ではない。おまけに Until をテキトーに世界の果てにくっつけて「世界の果てまで」としてみたり、挙句に「囚われたまま」の「まま」はどこから出てきたのかと、この和訳やった人を小一時間ほど問い正したい気分でいっぱいになった。(※下のコメント欄の「追記」参照)
 
 少し脱線するが言わせておくれ。詩なんだから少しぐらい曖昧であってもいいじゃん?てな主張は却下。HYDEのソロの英詩自体はHYDEが書いたんじゃなくて、全てHYDEが日本語で書いた詩をネイティブ・スピーカー(と思われる)の人に英訳してもらったもの。そんでその英詩は全ての曲に通じて、文の構造から冠詞 のa, the, 無冠詞の使い分け、複数と単数の使い分けに至るまでキチッと作られた質の良い英文なのですよ。だからこそ俺も和訳に挑戦してみようと思ったわけで。英語を良く知らんくせして、コネやルックスやちょっとした時の運に恵まれてメジャーデビューしちゃいました♪的な奴がエラソーにテキトーぶっこいて作ったようなメチャクチャな英文とはワケが違うのです。別に英語がわからんのが悪いと言ってるわけでもなんでもなく、ただ自分が芸能人であるという都合の良い殻を被ることで、さも私って英語も出来て頭良いでしょ?的な態度しながら、ファンを金儲けの道具としか考えていない奴に軽い殺意を覚えるだけであって。んな奴が増えてるから今の日本のCD業界そのものが落ち込んじゃうんです。そういう意味では、HYDEほどの大物アーティスト的な地位を獲得してれば、その気になればある程度テキトーな英詩を自分で書いても売れるにもかかわらず、そうすることを良しとせずにネイティブに英訳を委託してるってことは、HYDE自身が自分のことを英語に明るくないと素直に認めてるってことであり、また地位に溺れることなく良質の音楽を作っていきたいという気持ちの表れだと思う。そんなところが好きで俺はHYDEのファンを今でもやってるんであって。まぁ、とかいいながら最近のHYDEは歌詞をよく忘れますが(笑)
 それなのに、この体たらくな訳は何事かと。いや別にHYDEが好きな中学生、高校生その他一般の方が自由に訳す分には一向に構わないんだけども(お前も一般人だろうとかいうツッコミは勘弁;笑)、まがりなりにもプロとして映画作ってる奴がこんなことではちょっと困るという話です。HYDEに謝れバカヤローコンニャローめ!

●はい、少しどころか大幅に脱線しました、すいません(笑)本題に戻りまして、文の構造は前述した通り the ends of the earth が embrace されるという関係にあるんだけども、問題は一体何に embrace されんのかということ。そんで、embrace(抱く、包み込む)ということができそうなもの、とりわけ大地という巨大なものをまるごと飲み込んでしまえるようなものを前後に探してみると、鍵となるのは前文の in the shadows しかない。この文は省略を補うと Until the ends of the earth (are) embraced (in the shadows) となるってのが俺の解釈。
●で、結局、訳はどうなんのかだけど、まず end が ends という複数形になってるため、この end は「終わり」じゃなくて「端」でいいと思う。それを考慮すると「大地の果てまで闇に覆い尽くされるその時まで」とするのが一番スッキリすると思うんだけども…でもね…ちょっと待った。その訳は微妙に「HYDE的」ではないのよ。ただ単に「覆う」だったら別に embrace じゃなくて、例えば cover とかもっと違う表現があるハズ。それがわざわざ embrace を使うってのがHYDEのこだわりを感じさせるところ。そう、ラルクのコアなファンなら何となく分かってもらえると思うけど、HYDEは「闇」やら「光」やら「想い」やら「ぬくもり」やら「匂い」やら、そういった形のないものに囚われたり包まれたりするときに好んで「抱かれる」って表現を使うんです。だからここは敢えて「大地の果てすら闇に抱かれてしまうその時まで」としてみた。
●とまぁ、いろいろエラソーにボロクソ書いておいてなんだけど、ぶっちゃけここのところは俺にも良く分かりませんごめんなさい(笑)情報求む!

The ghost ship wanders far
訳:「幽霊船は遥か彼方を彷徨う
● wander は「さまよう」。wonder(=不思議に思う)と混同しちゃイヤよ。
● far は副詞で「遠くに」

For there is no guiding star
訳:「道を照らし出してくれる星がないから
● For はHGの叫び。じゃなくて後から理由を付け加えるときに使う接続詞で「というのも〜だから」
● guiding star はもちろん「導く星」なんだけど、一介のHYDEファンとしてはもう一歩踏み込みたいところ。星が導くってどういうことだろうか。まぁ普通は星座の見える方向などから方角を推定するみたいなイメージだと思うけど、多分HYDEの思い描くイメージは違うハズ。ラルクの曲“あなた”(アルバム『HEART』収録)にこんな一節がある。「地図さえない暗い海に浮かんでいる船を 明日へと照らし続けてる あの星のように」 これ、“THE CAPE OF STORMS”の情景によく似ていることが分かる。つまり、HYDE的に「星が導く」とはその星の輝きで進むべき道が照らし出されるイメージなのだ。したがってここでは「道を照らし出してくれる」とした。

And this treasure has no meaning any more
訳:「それにもうこの財宝には何の価値もない
●ここは特に問題ないだろう。

You know completely The taste of sin
訳:「君は知り尽くしている 罪の味を
● know completely は「完全に知っている」→「知り尽くしている」とした。
●もちろんこの部分は1番の You'll never notice The colour of sin と対比されている。

Melting sweet in your mouth Like chocolate
訳:「甘く口の中へ溶け込んでいく まるでチョコレートのように
● Melting 〜は分詞構文でいいかな。The taste of sin melts sweet in your mouth を圧縮したもの。
●念のためだけど like はもちろんチョコレートが「好き」なんじゃなくて、「〜のように」という前置詞。ここんとこ間違えて例えば「口の中で甘くとろけるチョコレートが好き♪」とかテキトーやると、天然キャラとして周りからのウケはいいかもしれなけど受験戦争にはたぶん不利です。

A moment of pleasure You are fulfilled
訳:「ひと時の快楽に 君は満たされる
●ここんとこ、『下弦の月』では「その蜜に貴方は溺れてしまう」となってるんだけど、さすがにちょっとひねり過ぎじゃないかな。pleasure は単純に「快楽」でいいと思う。なぜならHYDEは「快楽」という単語もよく使うので、ここは素直に訳した方が「HYDE的」だろう。

But every dream has its time To die
訳:「でもどの夢にも 終幕は必ず訪れる
●直訳は「しかし全ての夢には死期がある」。「死期(= its time to die)」をどう訳すかなんだけど、ここは俺がラルクの“finale”(アルバム『REAL』収録、映画『リング0』のテーマ曲)が大好きなので、個人的趣味(笑)で「終幕」とした。

Will this be my fate?
訳:「これが僕の運命なのか?
●豆知識。fate は「悪い運命」。だからその形容詞は fatalで「致命的な」とかいう意味になる。反対に「良い運命(=幸運)」は luck。もちろん形容詞は luckyで「幸運な」。良くも悪くもない単なる「運命」が fortune となる(もちろんこれが絶対な分類法ではないけど)。



 終わった〜。疲れた。疲れすぎた。果たしてこの先やっていけるのか。つーか俺はなんでこんなところで英語の講義みたいなことをしているのか軽く自問したくなったけど敢えてスルー。

 「ここが間違ってる」とか「ここはこうした方がもっと良い」とかいうご意見があればどしどしコメントくださいね。
 …ごめん、やっぱ「どしどし」は勘弁。ちょっとは手加減してください。あんまりたくさんのダメ出しくらうとヘコむので。ダメ出しじゃなきゃいいけど(笑)




○“THE CAPE OF STORMS”を是非試聴しよう


posted by 緋雨 at 00:01| Comment(3) | TrackBack(0) | HYDEアナライザー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
〜追記〜

 上で、 Until the ends of the earth Embraced の『下弦の月』の和訳である「世界の果てまで囚われたまま」ってのがありえね〜と書いたんだけど、かなりヒネッて考えるとまったくありえない訳でもない。

 とりあえず原文を、歌詞カードにあるままの形で載っけると…

@ Here in the shadows
A I am pursued
B Until the ends of the earth
C Embraced

となっている。要はこの4つをどう組み合わせるかの問題である。俺は…

 <@+A>←<B+C>(矢印は修飾の方向)

…と捉えたんだけども、どうやら『下弦の月』では…

 @→<A+B>←C

と捉えているらしい。こう考えた場合、until は接続詞ではなく前置詞ということになり、意味としては「世界の果てまで僕は追われる」が中心になる。じゃあ、残りポツンと浮いている Embraced は何なのかというと、これ一語だけの分詞構文ということになって、主節(I am pursued)にかかってゆく。こうすれば、確かに Embraced の意味上の主語は I になって、その結果「世界の果てまで囚われたまま」という訳が出てくる。

 しかし、まず until の目的語に、「時間」じゃなくて the ends of the earth という「場所」をもってくるのがかなり不自然だし、Embraced を一語だけの分詞構文と捉えるのもヒネり過ぎな気がする。もちろん、一語だけの分詞構文もないわけじゃないんだが。
Posted by 緋雨 at 2006年07月05日 00:05
とっても今更で申し訳ないのですが、いろんな和訳を見ましたが納得できずここに辿りついて初めて納得できました。
全く英語に自信のない私ですがちゃんと意味を知って歌を聴きたいと思い自分で訳したらほぼ直訳でw
このページに出逢えてホント良かったです。何より独りよがりな和訳と違い、HYDEなら、と考えてくれてる所に愛を感じました。
ありがとう。
Posted by †MIE† at 2009年10月31日 03:02
初めまして*

映画「下弦の月〜ラスト・クォーター」が
大好きな私は、
久しぶりにこの映画を見たくなるのと同時に
Blogに書こうと思い、検索していると...

検索途中でお邪魔させていただいたので
あいさつと思い...(・w・`)

▸Hydeさんの感受性の美しさや儚さを
すごく表現されている素敵な曲と歌詞ですよね*
▹突然、すいませんでしたm(--)m
Posted by Naturally♡ at 2011年06月26日 21:57
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